WEBニュース&コラム

口腔機能水Webニュース&コラム 4号

日本口腔機能水学会常任理事・バイオインプラントアカデミー 田中 收

1.強電解水歯科領域研究会からのスタート

1994年、昭和大学の芝華彦教授(当時)の音頭によって強電解水歯科領域研究会が発足し、世界に先駆けて歯科分野で電解機能水の研究が始まりました。まだ、ほとんどの歯科医が機能水という用語を知らなかった四半世紀も前のことになります。研究会は8回の研究会開催を経て、2000年3月には現在の日本口腔機能水学会に発展し、年1回の学会を開催しています。2015年には会長を佐藤勉教授(日本歯科大学東京短期大学)にバトンタッチし、学会は新たな展開を迎えています。

2.「魔法の水?」

当初は、単に食塩水を電気分解して得られるだけの水が、瞬時にして強力な殺菌力を発揮することから「魔法の水」とも表現され、まだその作用機序など実態が明らかにされない点も多くありました。その殺菌力のメカニズムについても、酸化還元電位(ORP)によるもの、低pHによるもの、活性酸素によるものなどの諸説がありましたが、現在では次亜塩素酸が主体であることが解明されています。
 また、当初の研究対象の主体は、瞬時に極めて強い殺菌力を発揮する電解強酸性機能水(pH2.2-2.7)でしたが、臨床応用に当たっては金属腐蝕の問題があり歯科器材などの殺菌に使用するにはやや難があったため、研究対象は次第にpHの高い弱酸性水(pH2.7-5.0)、微酸性水(pH5.0-6.5) 、電解中性水、電解次亜水(pH7.5 以上)に広がっていきました。近年ではさらにオゾン水も研究対象に加わっています。

3.臨床応用の広がり

強力な殺菌力を持ちながら、食品添加物としても厚生労働省に認可されるほど生体に安全性の高い電解機能水は、学会の地道な基礎・臨床研究をベースに、現在では歯科分野でも広く認知されるようになっており、電解機能水の生成装置を導入している歯科医院も少なくありません。
 歯科臨床応用の分野としては、手指や口腔内の洗浄、各種器材の殺菌・消毒など多岐にわたっており、殺菌という目には見えにくい分野ではあるものの歯科治療のあらゆる場面で活躍しているといっても過言ではありません。歯科臨床への応用範囲や方法などについては、当学会で発行している「口腔機能水ガイドライン」に詳述されていますので、ご参照いただければと思います。
 私はインプラント埋入手術を専門としていますが、顔面皮膚や口腔内の洗浄、消毒はもちろん、オートクレーブ滅菌ができないプラスティック部品などにも応用しており、私のインプラント臨床にも電解機能水は欠かせない存在になっています。

4.歯科治療ユニットの給水路の汚染対策

近年の学会の大きなテーマの一つとして、歯科治療ユニットの給水路の汚染対策があります。歯科治療ユニットのタービンから排出される水や、患者のうがい用水には、給水チューブ内のバイオフィルムに起因するかなりの細菌が含まれていることは、当学会でも多くの研究者によって報告されてきました。新聞・週刊誌などにも「歯科ユニットの水の汚染の実態」が掲載され、社会的にも問題視されました。しかしながら、それを根本的に解決するよい方法がなかったため、これまで改善されないまま放置されていたのが現状でした。その解決策として登場したのが電解機能水です。
 初期には、電解強酸性水をユニット内に導入する方法が一部の研究者で試されていましたが、金属腐蝕・材質の劣化の危険性を抱えていたため、広く普及するには至りませんでした。
 しかし、最近になって、水管路の素材に悪影響を及ぼしにくい電解微酸性水や電解中性水を使用して給水管路を無菌化する方法が実用化されて、すでに臨床での応用が始まっています。なかでも、電解中性水は殺菌力を保ちながら水管路の素材にほとんど影響を及ぼさないため、この電解中性水を採用するユニットメーカーも出てきました。歯科ユニットの大きな問題であった給水路の汚染への対策が、機能水によって本格的に進みだしているのです。

5.機能水のさらなる普及へ

学会のこれまでの地道な研究活動により、機能水の作用メカニズムなどはほぼ解明されてきました。今後は、この優れた電解機能水をさらに多くの歯科関係者に認知・理解していただき、より清潔な歯科診療環境の構築に役立ってほしいと期待しています。
 一般の消毒薬とは異なり、使用後は普通の水に戻る環境に優しい水でもありますから・・